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他人の住民票でも適法に取得できる場合とその方法

他人の住民票を取得したい!?

他人の住民票を取得する必要があるということは、何らかの理由で他人の住所を知る必要があるということです。

住所情報は、個人にとっては間違いなく知られたくない情報ですし、住民票を取り扱う市町村区役所からしても絶対に漏洩させてはならない超機密情報です。

ご自身の住民票が他人に取得されるとしたらいかがでしょうか?
普通に考えてイヤですよね・・・。

当然、他人の住民票をそう簡単に取得できるようではマズイわけで、何の関係もない他人の住民票を取得することは不可能です。

しかし、他人の住所を知る必要がどうしてもある場合も時にはあります

例えば、

  • お金を貸したけど返してもらえない。請求するにも相手方(他人)の住所がわからない
  • 親が亡くなって遺産分割協議をしなければならないのに、相続人(他人)がどこにいるかわからない

といったような場合があります。

これらの例は他人の住所がわからないと困ってしまうケースです。
実は、このような場合、他人の住民票を取得することが法律で認められています

住民基本台帳法第12条の3

まずは、根拠法となる住民基本台帳法の条文をご覧ください。

本人等以外の者の申出による住民票の写し等の交付)
第十二条の三
市町村長は、前二条の規定によるもののほか、当該市町村が備える住民基本台帳について、次に掲げる者から住民票の写しで基礎証明事項(第七条第一号から第三号まで及び第六号から第八号までに掲げる事項をいう。以下この項及び第七項において同じ。)のみが表示されたもの又は住民票記載事項証明書で基礎証明事項に関するものが必要である旨の申出がありかつ、当該申出を相当と認めるときは、当該申出をする者に当該住民票の写し又は住民票記載事項証明書を交付することができる
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者
二 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある者
三 前二号に掲げる者のほか、住民票の記載事項を利用する正当な理由がある者

これが、根拠条文です。
太字と赤字だけ抜粋してつなげると、

市町村長は次に掲げる者から、住民票の写しが必要である旨の申出があり、当該申出を相当と認めるときは、当該申出をする者に当該住民票の写しを交付することができる。
一、自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者

つまり、自分の権利行使や義務履行のために必要であれば、本人以外でも住民票の写しの交付を請求できるということが書いてあります。

ちなみに、条文中の「当該」という2文字は「その」に置き換えていただくとわかりやすいです。

他人の住民票を取得できるとき⇔権利者か義務者であるとき

要するに、他人に対して自分が権利者か義務者であれば、その人の住民票を取得できる可能性があるということになります。

可能性があるというのは、

  • 権利を行使するために住民票の写しを取得する必要がある
  • 義務を履行する(果たす)ために住民票の写し取得する必要がある

ということで、住民票を取得しなくても権利行使、義務履行に支障がなければ、やはり原則どおり他人の住民票の写しは取得できないということになります。

(ちなみに、権利行使や義務履行のために知る必要がある情報は必ずしも他人の「住所」とは限らず、「氏名」などの正確な情報が対象となる場合があります。そのようなときも、条文に「住所」ではなく住民票の記載事項と書かれているように、その情報を知るために他人の住民票を取得できます。)

どうやって交付請求するのか?

ここから、読者の皆様が他人に対して法律上、権利者又は義務者であるといえる場合に、どうやって交付請求するのか解説します。

まず、みなさんが自分で自分の住民票の写しを交付請求する場合を思い浮かべて下さい。
交付請求用紙に必要事項を記入して窓口で提出すると思います。もしくは、郵送で手配することもあるでしょう。

基本的な流れは、同じです

違いは、交付請求の対象が、自分の住民票の写しではなく、他人の住民票の写しになるということに紐付き現れます。

「自分で自分の・・・」の場合、本人が交付請求できるのは法律上当たり前のことなので、特に用紙に説明を書く必要はありません。

しかし、ここまで見たように、「自分で他人の・・・」となれば、自分が他人に対して権利者か義務者であるということを示す必要があります

この点を交付請求用紙に書くことになります。
他にも他人の住民票の写しを交付請求する場合に必要な項目が法律に書いてあるので見てみましょう。

他人の住民票を交付請求するために必要な情報

次の条文は、先ほどの第12条の3第4項になります。

4 第一項(他人の住民票を交付請求できる場合)・・・の申出は、総務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一 申出者・・・の氏名及び住所・・・
二 ・・・(略)・・・
三 当該申出の対象とする者の氏名及び住所
四 第一項に規定する住民票の写し又は住民票記載事項証明書の利用の目的
五 ・・・(略)・・・
六 ・・・(略)・・・

つまり、他人の住民票の交付請求をするにあたっては、

① 自分の氏名・住所
② 対象者の氏名・住所
③ 住民票の利用目的

を明らかにする必要があることなるため、3点の内容を交付申請書に書きます。

岡崎市(愛知県)の住民票交付申請書のサンプル

具体的にイメージしていただけるように、当事務所の所在地であり代表の地元でもある愛知県岡崎市のサンプルを掲載します。

赤枠の部分が「①自分の氏名・住所 ②対象者の氏名・住所 ③住民票の利用目的」に該当するところです。

(例)愛知県岡崎市の住民票交付申請書

(例)愛知県岡崎市の住民票交付申請書

(http://www.city.okazaki.lg.jp/650/658/659/p004654_d/fil/koufusinnseisyo-japan.pdf)

ここで、少し、「えっ?」と思われませんでしたか?

「ここに書くだけでいいの?(というかそれで他人の住民票を取得できちゃったらまずいのでは?)」

という感覚が正しいと思います。

確かに、交付請求書の必要事項の欄にそれぞれ法律で定められた情報を記入する必要があります。

、それだけではダメです。

例えば、貸したお金を返してもらえない場合であれば、請求理由の蘭に、

などと記入するわけですが、こんな一言だけで他人の住民票を取得できるなら、悪意ある人が取りたい放題とりまくっていることでしょう。

誰が見ても、それって本当なの?真実なの?と感じると思います。
住民基本台帳法も請求理由が真実であるかを証明するよう求めています。

権利者・義務者であることの証明すること(証拠)も必要

先ほどの条文の一部再掲します。

4 第一項(他人の住民票を交付請求できる場合)・・・の申出は、総務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。

とあります。

「総務省令で定めるところにより」というのは、「住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票の写し等の交付に関する省令」という総務省令(制定時の呼称では自治省令)の次の条文のことです。

(本人等以外の者の住民票の写し等の交付の申出の手続及び申出につき明らかにしなければならない事項)
第十条 法第十二条の三第一項又は第二項の規定による住民票の写し等の交付の申出は、同条第四項各号及び次項に掲げる事項を明らかにするため市町村長が適当と認める書類を提出してしなければならない。この場合において、市町村長が必要と認めるときは、同条第四項第四号の事項(権利行使又は義務履行のためであること※筆者注)を証する書類の提示又は提出を求めるものとする。

一言で言うと、用紙に書くだけでなく、「権利者・義務者である証拠も見せるか提出するかしてくださいね」

ということです。

例えば、貸したお金を返して欲しい場合でいえば、金銭消費貸借契約書などを見せるということです。

権利者・義務者であることの証明は意外と難しい

少し細かい話になりますが、貸したお金を返してほしいケースを前提に、役所の職員の立場になって考えてみたいと思います。

金銭消費貸借契約書を見せられたとして、どう思うか?判断するか?ということです。

「確かに、ここに金銭消費貸借契約書がある。しかし、本当にまだ返済が終わっていないのだろうか?(もし仮に終わっていたとしたら、この人に住民票を交付してはならないのでは?)」

と思うかもしれません。

つまり、金銭消費貸借契約書を見せただけで、住民票を必ず交付してもらえるとは限らなさそうだということになります。

このように、権利者であること、すなわち、自分に権利が発生していることや、それを客観的に証明するには該当する法律(この例では民法など)を知らないといけないところが、最大のハードルとなります。

とはいえ、逆に、

「本当に有効に金銭消費貸借契約が成立していて、提示された契約書も本物であって、早く請求しないと例えば時効でこの人の権利が消滅でもしてしまったら大変だ」

とも思うわけで、最終的にはどの程度まで立証を求められるかの問題となります。

条文にも、交付請求が認められる条件として市町村長が申出を相当と認めるときはと書いてありましたね。

市町村長の裁量に任せているわけです。
なので、完全な立証が不可能な場合は、認めてもらえるように丁寧かつ具体的に事情を説明することになります。

(もちろん、完全に証明できればそれに越したことはありません)

絶対ダメ!他人の住民票を不正取得したら犯罪者です

最後に、本当に困って本記事にたどり着いた方には蛇足の注意書きになりますが、

不正で他人の住民票を取得をしたら罪に問われます。犯罪です!

住民基本台帳法自体が、偽りその他不正の手段により他人の住民票の写しの交付を受けた者は三十万円以下の罰金としていますし、公務員を欺いて公文書を交付させていることになるので刑法に定められた犯罪の構成要件に該当する可能性も十分あります。

本人通知制度を採用している自治体もあります

最近では第三者による住民票の交付請求があり、それを認めて住民票を交付した場合に、本人に通知する制度を導入している自治体が増えてきています

このような自治体では、他人が自分の住民票を取得した場合、察知することができます
逆に、他人の住民票を取得した場合、その他人に取得の事実を知られるということになります。

いずれにしても、住所確認のために住民票の写しを取得する場合、

正式な表記を知る必要がある→法的な意味を持つ行為の前処理

というロジックが想定されますので、専門家に相談するなどしっかり対応することが必要です。

まとめ

実際にやってみないと、ホントだ!とはならないと思いますが、実際に他人の住民票は法律で定められた条件を満たしていれば取得できます

本記事の内容を参考にしていただければ、行政書士などの専門家に依頼しなくてもできると思います。

難しいのは権利者・義務者に該当するかどうかの判断とその立証方法ですが、必要であれば専門家に相談してみて下さい。

もちろん、当事務所へのご相談も大歓迎です。メールやLINEでの相談なら無料ですので、お困り・お悩みの場合はお問い合わせ下さい。

本記事は以上です。ありがとうございました。

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